甲子園史上たった2度の「完全試合」!    歴史に名を刻んだ投手と仲間たちの軌跡

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甲子園史上たった2度の「完全試合」!      歴史に名を刻んだ投手と仲間たちの軌跡
高校球児たちの熱いドラマが繰り広げられる春の選抜高等学校野球大会(センバツ)と夏の全国高等学校野球選手権。その長い歴史の中で、わずか2度しか達成されていない偉業、それが「完全試合」。一人の走者も許さずに試合を終えるという、まさに完璧な投球が求められ、エラーも許されないため、試合終盤は野手にも計り知れないほどのプレッシャーがのしかかります。今回は、高校野球ファンのみならず、多くの人々の記憶に刻まれた2つの伝説的な試合と、偉業を成し遂げた投手たちのその後に迫ります。

1978年センバツ大会、前橋対比叡山、松本稔の78球

1978年3月31日、第50回選抜高等学校野球大会の2回戦。群馬県代表の前橋高校と滋賀県代表の比叡山高校の一戦で、高校野球史に新たな1ページが刻まれました。前橋高校のエース、松本稔投手が甲子園史上初となる完全試合を達成したのです。

歴史的偉業達成への道のり

この日の松本投手は、序盤から完璧な立ち上がりを見せます。ストレートとスライダーを低めに集め、比叡山打線を翻弄。一球ごとにアウトを積み重ねていく姿は、まさに精密機械。比叡山の各打者を打ち取るというミッションを1つずつクリアしていきました。
球場の空気は徐々に張り詰め、スタンドの観客も歴史的瞬間への期待を高めていきます。バックを守る野手たちもプレッシャーに打ち勝ちながら、松本投手は、一人の走者も許すことなく9回を投げ抜き、この偉業を達成しました。特筆すべきは、要した球数がわずか78球だったこと。MLBにグレッグ・マダックスが現れる前なので、そのような言い方はしませんが、100球未満での完封、しかも78球という驚異的な「マダックス」達成でした。松本投手の投球術は、今もなおセンバツ最少投球数での完全試合記録として燦然と輝いています。

1978年 第50回センバツ高校野球大会 2回戦スコア

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
比叡山 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
前橋 0 0 0 0 0 1 0 0 X 1 6 0

試合後の反響と松本投手の評価

試合後、松本投手は全国の注目を浴びることになります。冷静沈着なマウンド捌きと、ピンチにも動じない精神力は高く評価されました。完全試合という極度のプレッシャーの中で、最後まで自分の投球を貫いた精神力は驚嘆に値します。この快挙は前橋高校を初のベスト8へと導き、松本投手自身の野球人生においても大きな転機となりました。

1994年センバツ大会、金沢対江の川、打たせて取る中野真博の真骨頂

松本投手の偉業から16年後の1994年3月28日、第66回選抜高等学校野球大会の1回戦で、再び完全試合が達成されます。石川県代表の金沢高校と島根県代表の江の川高校(現・石見智翠館高校)の対戦。この試合の主役は、金沢高校のエース、中野真博投手でした。

相手打線を打ち取る投球術

中野投手は、三振を量産するタイプではなく、打たせて取るピッチングが持ち味でした。低めへの抜群の制球力と緩急をつけた投球で、江の川打線のバットの芯をことごとく外します。
内野ゴロや外野フライの山を築き、危なげなくアウトを積み重ねていく姿は、まさに職人芸。バックの堅い守備にも支えられ、完璧な内容で試合を締めくくりました。この完全試合は、金沢高校を初のセンバツベスト8進出へと導く大きな一歩となったのです。

1994年 第66回センバツ高校野球大会 1回戦スコア

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
江の川 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
金沢 0 0 0 1 0 0 0 0 X 1 7 0

センバツ史上2人目の偉業

中野投手の完全試合は、センバツ史上2人目の快挙となりました。松本投手とは異なる「打たせて取る」スタイルでの達成は、高校野球における投球術の多様性を示すものとして、多くの野球ファンに感銘を与えました。球数を抑えつつ効率的にアウトを重ねる、理想的なピッチングと言えるでしょう。

完全試合を成し遂げた2人の投手の卒業後

センバツで完全試合という偉業を成し遂げた松本稔投手と中野真博投手。彼らは卒業後、どのような道を歩んだのでしょうか。

松本稔投手、教員の道へ

多くのプロ球団から注目された松本投手でしたが、彼はプロの道には進まず、教員の道を選びました。群馬大学教育学部に進学し、卒業後は高校教員として母校・前橋高校野球部の監督も務めました。野球指導者として後輩たちの育成に尽力し、甲子園を目指す球児たちに野球の楽しさや厳しさを伝え続けたその人生は、まさに「高校野球の申し子」と呼ぶにふさわしいものです。

中野真博投手、社会人野球を経て引退

一方、中野投手は卒業後、社会人野球の名門チームに進みました。プロからの誘いもあったと言われていますが、彼は社会人野球でのプレーを選択。強豪チームのエースとして都市対抗野球大会でも活躍しました。残念ながらプロ入りは叶わず、数年間のプレーの後、現役を引退。その後の動向はあまり報じられていませんが、高校時代に達成した完全試合は、彼の野球人生における最高のハイライトとして今も語り継がれています。
春のセンバツで達成された2度の完全試合。松本稔投手と中野真博投手、それぞれが個性あふれる投球で歴史に名を刻みました。彼らの偉業は、これからも高校野球の歴史の中で永遠に語り継がれていくことでしょう。

まとめ

1イニングを3人ずつで終わらせ、9回まで打者27人を連続でアウトにする完全試合は、日本のプロ野球でもわずか16人しかいません。試合数で考えれば甲子園で行われた高校野球の試合で2人というのは確率的には相当高いのではないでしょうか。松本投手も中野投手もプロ野球には進んでいないという共通点がありますが、それは2人とも圧倒的なボールの力で打者を抑えたのではないことを意味していると思います。正確なコントロール、巧みなキャッチャーのリード、そしてバックを守る野手たちの諦めない守備、1回から9回まで途切れない全員の集中力、これらが全て揃って偉業が達成されたのでしょう。高校野球の改革案が議論され、2025年の国民スポーツ大会では7イニング制で試合が行われました。もしこれが甲子園にも適用されると、9イニングの完全試合は二度と達成されません。選手の体を第一に考える今の流れでは仕方ないのかもしれませんが、個人的にはやはり9イニングの野球を見続けたいという思いが強いです。そして、いつか9回を圧倒的なボールで打者を打ち取り続ける完全試合を見てみたいものです。

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